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翠輪堂-日記-

文月あずさ@JADERINGSもしくはAzusa-Fの趣味的日常記録/不定期更新

ゼノクロ8周年ハピバなのです!
とかいいつつ、昨年ドールライセンスをゲットして以降、それどころじゃなくて全然ゼノクロ行ってないんですけどな!
ゼノブレ3のせいおかげでゼノが大渋滞しまくっております。
ただでさえリア充(リアル充満)なのに! 誰かコピーロボット下さい(切実)

(8歳と8周年は違うよ!と後から気がついたので当日中にタイトル修正しました)

そんな中なんですけど、実はSSの種が一本ありまして。
バテン復刻の報を受けた時に一気に骨組みまで作ってたんですが、細部いじくってたら当日にギリギリになってしまいました。

で、なんでバテン→ゼノクロかって?
うちのアバ子、バテンで精霊に付けた名前と同じ名前なんですな。

言うたらゼノサDSの俺キルシュもそうです。
モノリス作品の名前付け可能キャラはエターナルチャンピオン化してあります。
そんなきっかけで出てきたお話です。
……け、決して名前思いつくのがめんどいとかそういう訳では無い!


ゼノクロとしても前日譚(白鯨航行中)だし、バテンに至ってはゼノブレっ子にバテンをやらせたい思惑があるのでネタバレ一切無しの空気だけなんで、ゼノクロの公式サイトSS読んでればとりあえず読めるレベルのお話です。
例によってクッション置きますので、二次創作苦手な人はこれでリターン~。


逍遥遊

 つ……と涙が頬を伝う。
 その刺激で私は唐突に目覚めた。目覚めて半身を起こした。
 見渡せば幾重にも並んだコールドスリープのカプセル。土埃の欠片もない清潔で直線的で凍てついた空間。
 さっきまでいたあの世界では無い。
 雲が街にあふれ、翼を宿した人々が行き交う賑やかな街など、影も形も無い。雑踏の喧噪、空を舞う花びら、市場で売られる食べ物の匂い――生々しいそれに比べて、ここは――地球を脱出してきた移民船【白鯨】の居住区は――あまりに音も無く静かで孤独だった。
――夢、だ。またあの夢。
 地球を出て、いや逃げ出して一年半。夢に見るのはもう帰れない故郷ではなく、見るのは何故かその不思議な世界だ。
 その世界で私は旅をしていた。
 精霊憑きと呼ばれる青年と、その仲間達の傍らで。
「あら、どうしたの?」
 扉がシュンと音を立てて開いた。短い銀髪に褐色の肌を持つ女性が首をかしげてこちらを見ている。
「エルマ大佐……どうしてここに?」
 問うと彼女は軽く微笑んだ。
「たまたまよ。いつもの巡回中」
 一部のクルーを除き、殆どの乗組員は多くをこのコールドスリープで過ごしている。爆散した地球を離れ、いつたどり着くかわからない生存可能惑星《ハビタブルゾーン》への旅で、人員の損耗を防ぐ為に必要な措置だった。
 彼女は私の筐体に歩み寄り、操作部を少しいじる。
「コールドスリープの調子がおかしいのかしらね。体に不具合はない?」
「いえ、体には問題ありません」
 半身を起こした状態のまま、私は軽く敬礼とした。
 直属の上司では無いが、この移民船への搭乗が告げられた者は幾度となく彼女から声を掛けられ知己を得ている。凜とした中にも気さくな空気を纏う彼女は全てのクルーの事を常に気を掛け寄り添おうとしているかのようで、ついその雰囲気に甘えてしまいたくなる、そんな雰囲気すらあった。
 だから、言うべきか言うまいか、悩んだ末私は告げる。
「不思議な夢を見ていました……」
 口を開いた瞬間、それまでつかえていた物語が口から溢れ出してきた。
 こころの翼をその身に宿して浮遊する大陸に住まう人々を。
 自分は、その中の一人の青年に寄り添い、彼や彼を取り巻く人々と共に旅をしていたことを。
 締め付けられるような悲しみと、怒りと、困惑と、そして触れた優しさと。
 まるで冒険小説のような、私たちの現実《いま》とはかけ離れた遠い遠いどこかの物語。どれだけ長く話してしまったかわからない。でもエルマ大佐は何も言わず、静かに聞き入ってくれた。
 目が覚めるまでの直前の話まで終えると、彼女はほうっと長く息をついた。
「胡蝶の夢、といったかしら。アジア圏でそういう言葉があるそうね」
「……そう、なんですか」
「無為自然。何かに執着するのでは無く、ただありのままの自分でいる様。私たちは今窮屈な旅の中だけれども、あなたの心は軽やかにこちらの世界とあちらの世界を楽しめているのね。それはとても素敵なことよ」
 確かに自分はアジアの出身だが、恥ずかしながら知らなかった。彼女の博識にはいつも驚かされる。
 でも、その知識の重みすら感じさせぬ彼女のふるまいはとても軽やかで、だからこそ心地よい。どれだけの研鑽を積んだら、この境地に至れるのか――彼女に声を掛けてもらうたび、安らう自分の心は思うのだ。
「もしまたその夢を見たら聞かせて頂戴。とても興味深いわ」
「ありがとうございます」
 彼女に促され、私はまた筐体へ自らを横たえた。幼子を寝かしつけるかのようにわずかに手を振る彼女に合わせ、そっと瞳を閉じる。
 次はどんな夢が、物語が私を待っているのだろう。
 再び大佐に話せる事があればいい、そう思いながら私は再び深いまどろみの中へ落ちていった。

 その約束が果たされる事が無くなるなんて、記憶を喪ってしまうだなんて、その時の私はまだ知らなかったのだけれども。





恒例の後書きいいわけ~……と言いつつも、実は4/29前に準備出来なかったので、いつもみたく重くはないんですけど、簡単に。
(ていうかSS本編よりも後書きの方が常に長いです文月さん。校長先生の談話(簡単にとか言ってチョー長い)か)

ゼノとバテンは決してクロスオーバーする物語では無くて、それぞれ独立したものなのだけれども、自分の中では「モノリスソフトの作品」という一点において、なんとなく繋がりを常に感じていたりもするのです。
それは映像技術かもしれないし、物語の根底かもしれない。
なので、なんとなく私の中で繋がっているゼノとバテンを表現してみました。
ワンドロ並の勢いだけで、その後細部を直そう直そうとしていたら29日までに出来なかった程度のなので荒削りです。でも久々にワンドロ風味だ~楽し~!

なおタイトルは「胡蝶の夢」という単語からの連想で、荘子の言葉そのまんまです。「胡蝶の夢」という言葉をエルマさんから言わせたかった、というのが初稿の段階であっただけで、タイトル本体は相変わらずの難産ですが。
胡蝶の夢というとペルソナ1のオープニングが真っ先に出てきてしまう自分ですが、ゼノクロって(とくにアバ男/アバ子の場合)当たらずも遠からず?なところあるかな~と思ったり思わなかったり。……あんまり深い事考えてません。アバ子が蝶のタトゥー顔につけてるのもなんとなくだったしねー(最初からバテンの精霊名使うつもりだったから、タトゥー一覧見て即決だったっす)。

今回のSSはかなり勢いの作品で、久々にこういう書き方したんですが、まだこういう作り方楽しめるな自分、というのを実感しました。
ゼノは、やっぱりその背景(元ネタ)をしっかり読み込んだ上で、それを組み込みSSにするのがとにかく楽しいんですが、最近のゲーム本編のプレイのペースを考えると、なかなかそれが出来なくてのう……。というか「敢えてやらない」方が軽やかに書けるんじゃなかろかと思わなくもなかったり。
まぁ所詮個人の手慰みなので、好き勝手にやりますよん。
風のむくまま気の向くまま。

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