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翠輪堂-日記-

文月あずさ@JADERINGSもしくはAzusa-Fの趣味的日常記録/不定期更新

[文献覚書]ヤコブの梯子→パトられてる!? という妄想連鎖
当方「どうせRTAなんか出来ないわい!」と、ゲーム進行中であってもネタバレを一切忌避しないタイプでして。というかむしろ「ネタバレがあっても、その話の流れや勢いを実際に見た時の感動は、それがイイモノであった場合、いささかも衰えることはない」と思う派。

なので、せっかく手に入れたゼノブレ2のサントラ(USB版は間に合わなかったので豪華版)ブックレットも、ネタバレ忌避せず容赦なく読みまくりました。
まぁかなり作中ネタバレは避けている内容だったのと、ネタバレっぽいなぁと思ったトコは勝手に忘却スキルを発動しましたので(※よく飼い慣らされたファン)、何の問題もない、といったところです。

で、その中でちょっと気になった言葉が一つありまして。
ED曲「One Last You」の日本語歌詞に書かれていた「ヤコブの梯子」 という言葉。

いやね、詩的表現というか、雅語表現と言ってしまえばそれまでなんでしょう。
腹に「金」と書いた赤い布巻いた男がいたらそれは金太郎であると日本の誰もがわかるように、日本語圏の私達が知らない、向こうの文化の中のイコノロジカルな言い回しの一つなのかもしれない。もしくは「おっと合点承知の助」みたいに、もしかしたらキリスト教文化圏では、何でもない、ただ一つの言葉遊び的表現かもしれない。

ただゼノブレが世界的に(特にキリスト教圏に)ウケていて、それはそうとして世界同時発売で、思えば任天堂作品ってそういう宗教的なもののところへは基本アンタッチャブルだったところに、あの言葉が出てくる歌詞がEDに使われている(OK出されている)、というので、興味をそそられたのは事実です。

こちらもゲーム本編があまり進まないうちに考察したくなって、家事の傍らWikipedia入り口にいろいろ文献探索(但しネット上のみ)にずぶずぶツッコんでいってしまったんですが、もしかしたら先々の展開への核心に、知らずざっくり踏み込む可能性もなきにしもあらず。
(どのくらい進んでないかというと、宝箱の上に乗るビャッコさんが可愛くて先に進めないという体たらく(萌)。ゲームは月に1時間!生活なもんで...すんません)
ビャッコさん宝箱に乗る
自分としては、たまたま思いついた妄想裏付け用の文献メモをメモっておこうかと思って日記に書き散らすつもりなんですが(一次資料未アタック/読み直し出来ずな文献紹介ばかりでご容赦)
うっかりネタバレ(するかもしれない)事故が苦手な人は、ゼノブレ2サントラずらずら並べてクッションにするのでここでざっくりUターン推奨です。
(豪華版もまだアマのリストに載ってたんで記録がてら貼ってみたけど、きっと転売屋の巣だよね~(T_T))
ネタバレ嫌な人、待避した? んじゃ始めるね。

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「ヤコブの階段」は、創世記28章10-12の中にあるエピソードの一つ。
長男のエサウに逐われ、一人荒野をさまようヤコブが、雲間から差す光に上り下りする天使を幻視し、神から「いつでもお前を見守っている。いつかはお前が住むべき地に帰してやる」と約束をされるシーンがありまして。ヤコブはその地を「ベテル(神の家)」と名付けまして。
※これだけはちゃんと見た(笑)。私が参照した旧約聖書は多分これと同版のもの。表紙とか本の作りが違うからもしかしたらちょっと違うかも。しかし最近はKindleで聖書もバラ売りされる時代なのね~。
ヤコブというと、追い出されたさらに先のラバンさん家でレアとラケルの姉妹をめとり、ルベンやらシメオンやらダンやらナフタリやらといった後のイスラエル十二支族を次々と成したので、多分ゼノっ子的には超キーパーソンな旧約聖書人物
そののち実家に錦を飾ろうと凱旋中、後にペヌエル(神の顔)と名付ける場所で、夜中に襲ってきた天使と手探りで取っ組み合った挙げ句、もも関節外しを喰らいながらもひっつき続けて相手をギブアップさせたり(創世記32-25~31)、後にベテルに戻ってきて祭壇を作った際に、神から「んじゃ今日からあんたイスラエルね」とか「生めよ、増えよ」と言われたので有名なお方ではありますが(創世記35-9~12)。
天使との取っ組み合いはよく絵の題材にもなっていて、何故か傍らにハシゴが書いてあったりするやつもあったりするけれど、多分、これは、前述の「ヤコブの梯子」の話からの混同だと思う。もしくは「これヤコブですよヤコブ!」と主張するためのイコノロジー表現か。
(イコノロジー/イコノグラフィーというと、個人的には若桑みどりの著書なんですが、書いてあったかな~。読んだの大分前だからな~。もうウロすぎて泣ける)
まぁそんなこんなで、おそらく今回の「One Last You」で歌詞で用いられている意味だと、このヤコブの梯子、「神が約束してくれた繁栄と安寧の地」 という意味、そのまんまのイメージなんじゃないかな~と思うわけです。
もしくは、私自身がもっとちゃんと本編進められてたら「あああああああああっ!」ってなるのかもしれない。まぁそれはその時の楽しみに取っておこうというわけでして。


ですが。

調べていくうちに、ちょっと興味をそそられるものにぶつかってしまいまして。

その名は「讃美歌320番」

この賛美歌、「ヤコブの梯子」のエピソードを元に、サラ・アダムスというイギリスの作家が書き起こしたもの。当初は306番だったそうなんですが、整理されて、現在では320番に位置づけられているものです。
旋律は何種類かあり、米国賛美歌の父ローウェル・メイスンによるもの("Bethany")、やはりイギリスの賛美歌作曲家ジョン・バッカス・ダイクスによるもの("Horbury")、イギリスのオルガニスト:サミュエル・セバスチャン・ウェスレーによるもの("Communnion")、生活メソッドを大事にするイギリスのキリスト教一派・メソジストのアーサー・サリバン卿の手によるもの("Propior Deo")があるそうな。
これ、タイタニック号に乗り合わせ、その最期の瞬間、人々に演奏で勇気を与え続けていたという楽長・ウォレス・ハートリーが、生前「自分の葬式にはこの歌使ってね」と言っていた事から、沈みゆくタイタニック号の上で演奏されていたという話があり、それゆえ、ディカプリオ主演の映画『タイタニック』を始め、多くのタイタニックを主題とした映画で、最期の時を奏でる曲として使われていたりも。ちなみにディカプリオの映画内で採用されている旋律は「Bethany」……だったハズ(後でDVDと賛美歌つべ見てみるべきだなコリャ)
タイタニック周りに関しては、子供向けでおおざっくり&フィクション入りまくりですが、概要を知るのには、マジックツリーハウスこっそりオススメ。うちの子達的には「世界はじめて物語」級の便利シリーズでございまする。(「ただいまーっと!」もウルトラクイズもない時代の、子供の教養のマシマシって結構ムズいなぁと日々子育てで思いけり)
近年になって実は演奏していたの別の曲だった説が出回っていたりもするんで、実際のところどうだったのかは、その場に居合わせた天上の方々のみ知る、といったところでして。ウォレス・ハートニーがメソジストだったというところから、実際は流してた旋律は「Propior Deo」だったんじゃないか説もあったりなかったり。
ここも深掘りするとまた面白そうなテーマではあるんだけどね。本筋からズレるので割愛。参考文献だけ置いて逃げるです(但し原著)。
とはいえ、タイタニック号の悲劇とこの賛美歌が分かちがたく結びつけられ、「賛美歌320番=葬送」というイメージは、おそらくタイタニック号の影響抜きには語れないんじゃなかろうかというくらい、人々に流布したのは事実でして。

その一例としては、このイメージを用いたものに、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』がありまして。
鳥取りが居なくなったあと、氷山にぶつかり沈む大型船からここに来たという青年家庭教師と姉弟が出てきて、サソリの赤く燃えた体の話をしたりするわけですが、宮沢賢治の時代には、既にタイタニックの話や、そこで流れていた賛美歌の話は既に有名だったらしく、賢治の初期稿には、実際にその賛美歌の歌詞のメモ書きが残っているという話も。
現在残っていて一般に見られるお話は第4稿だそうで、『校本 宮沢賢治全集』では、賢治の改稿の変遷も踏み込んで記されているそうです。

●青空文庫:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』(新潮社・校本全集刊行後の版) 他
『銀河鉄道の夜』というと、どうしても私はますむらひろしのネコ版を想像してしまうわけですが(ますむらひろし?っていう人もいるかもだが、ハウス食品劇場のCMでまるっこいネコ(ヒデヨシ)なら見たことあるでしょう!(超★断言))、そのますむらひろしの映画メイキング裏話の載ってる『イーハトーブ乱入記』で、賛美歌に関してとりあげていたかどうだったか……昔読んだのにちょっとウロ。(天気輪のビジュアルとか「ハレルヤ」が「ハレヤ」に書き換えてあったのをどう扱うかを悩んでいた話は覚えているんだけどね~)
昔テレビでやっていた映画の録画は持っているんで、後で見てみようかなとは思ってます。
銀河鉄道といえば、ゼノブレサウンドには欠かせない清田愛未さんとも縁深いプラネタリウムアーティスト・KAGAYAさんの代表作とも言える作品で、今でもあちこちのプラネタリウムで上映されているので、もし機会があったら是非。
……私、確か桑島法子さんがジョバンニとカンパネルラ2役でやってた奴をスカイツリーで見たな~。うう、また見たいよ~。(予告編だけで思い出して泣ける出来でした。エルマさんとはまた違った演技がスバラシイ。S-neryの頃を彷彿とさせる感じ)
直接関係ないけど、せっかく清田さんの話も出たので、清田さんの曲の予告編も貼っちゃえ~。
●プラネタリウム番組『銀河鉄道の夜』予告編●

プラネタリウム番組『銀河鉄道の夜』公式サイト▲

●KAGAYA studio×清田愛未「アースシンフォニー」予告編●

▲「アースシンフォニー」公式サイト▲
とまぁ、こんな感じで、賛美歌320番はタイタニックの悲劇と結びつけられ、そして葬送の曲として20世紀前半には、日本も含めてすっかり定着をしていたようなのです。
……ここら辺、踏み込んだ先行研究が見当たらないので、個人研究にとどまる部分ではありますが。(大学紀要とかまで首突っ込めればまた違うんだろうけどね~。力不足でスマヌ)

そんな賛美歌320番、戦後、とあるアニメ作品で、非常に印象深く使われておりまして。
それが『フランダースの犬』の、あの、ネロの今際の際のシーン
昔は「なつかしアニメ特集!」って特番多かったから、アラサー以上なら一度は耳にしていた事があるはず(妙な確信/実は「……懐かしい?」って思ってた当時十代)。
アニメ版は、放映期間の問題(52話分)もあってオリジナル展開てんこもりで、そこから翻って原作読んじゃうと、ネロの死は、かーなーり(可哀想なくらいに)あっさりしたものなんだけれども、アニメのあの演出、あれで、かなり記憶に残っている人は多いハズ。そりゃうっかり天使の羽根で連れて行かれる人を 「パトられてる!」って叫んじゃうくらいには(笑)。
しかも、この熱狂、世界的には珍しい形らしく、本場のベルギーで「なんでうちの国で無名の作品が、日本じゃあんなに大流行なの!」ってドキュメンタリー作られちゃったくらいだそうだしね。
アントワープ大聖堂に飾られたルーベンスの大型作品である『キリストの降架』――かつては喜捨をしなければ見られなかった作品を、望んでも得られなかった最上の絵を目の当たりにし、ネロは、満足そうに目を閉じる……。
そういえばあれも、キリストを下ろす際に使ったハシゴが描かれていたな。
ハシゴって、イコノロジー的には「地上と神を繋ぐもの」とか、そんな解釈があったハズ(ちょっとウロ)
『フランダースの犬』の舞台「アントワープ聖母大聖堂」へ!!これがネロの見たかったルーベンスの絵!! | ベルギー |Travel.jp
ちなみにあのラストの演出は、アニメ版を放映していた当時のスポンサー・カルピスの社長であり、クリスチャンでもあった土倉冨士雄氏の指示によるものだそうでして。「キリスト者にとって死は終わりではなく天国への凱旋」という、キリスト教(特に葬送文化)に馴染みの薄い日本の子供達にとって、正しきものを伝えようとした結果だとか。
昔のアニメは「ぼくドラえもんです」や「のび太にクセになまいきだ」のエピソードにも現れているように、子供だましと侮らずに子供に確かなものを、という大人の強い意志で彩られていて、そういったものこそがしっかり今でも残っているところを見ると、アニメ黎明期にそういう作り手に恵まれていて本当に幸運な文化の礎を持つことが出来たんだなあと感心することしきりです。
そうだよなー、日本人に馴染みの深い仏教的な観念で行くと、死は現世との絆に別れを告げるもの・終わりの象徴という見方だけれども、キリスト教の場合、死は、黙示録に示されたその日に復活を遂げ、神の国に向かうものであり、忌避すべきものでは決して無いんだよなー。
それが歴史の上で幾多の悲劇を生み、また幾多の悲しみを和らげ、幾多の思いを貫く指針となり、それを信ずる人々の生を支えてきたかと思うと……それがプラスであれマイナスであれ、純粋に興味深いなぁと。

自分、幼稚園がカトリックだっただけで、その後はどちらかというと厨二的学術的興味本位な感じでキリスト教というものをヲチしてる派なのですが、日本文化とはまた違った視点・違ったものの捉え方・見方は、本当に面白くて仕方ない(funnyじゃなくてinterestね)

とある一つの文化に依拠した物語は、異なる文化との混交・解釈によって、また新たな物語を生むんだなあ、としみじみしちゃう瞬間でした。



まぁソーカントクがここまで考えて歌詞にあの言葉を使ったとは到底思わないワケですが!
偶然とは恐ろしいものですね、って事でファイナルアンサー?……(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
(時々狙ってたりするから怖ぇ。
意図して繋がってたり繋がってなかったりするからチョー怖ぇええ)




ちなみに。
1990年封切りのサスペンスホラー『ジェイコブズ・ラダー』なるものもありましてのう。
ジェイコブ=Jacob=ヤコブね。
ベトナムの戦場にあったとある部隊の人々の、奇妙なサイゴの物語、だそうです。
……気になるけど、ホラー苦手なんだよな~(T_T)

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