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翠輪堂-日記-

文月あずさ@JADERINGSもしくはAzusa-Fの趣味的日常記録/不定期更新

イーラ7周年記念に何故サタはヒカリを「美しい」と言ってしまったのか考察SS
イーラ配信7周年おめでとり!
早いわ~、と言いつつ、私がクリアしたの結構最近だからなあ。(クリア報告のツイ転記版は2024年09月15日(日)のTweet|翠輪堂ー日記ーで公開予定です。実は転記の解放は投稿の1年後に設定してしまっている為、2025/9/14にアクセスしても多分このリンク機能しないという…連休なんで書き換えてる余裕ないから先に予約記入しといちゃう)

なお今回、SSなんとか間に合ったのでUPしちゃいます。大人サタとメツ(+ヒカリ)のお話です。
2の感想がちらちらTLに流れてきたのを見ていた時にあった「ヒカリを『美しい』と言っちゃうサタおかしくない?」に対する私の想像(妄想二次創作)
ちょっとお祝いには重苦しい内容なんですが、私なりの妄想考察ということで。
本編もイーラもクリア前提の内容なので、例によって二次創作苦手な人向けにクッション挟んでおきますね~。

ダムナティオ・メモリア

 戦艦マルサネスの中心、そこには大きな氷塊が在る。
 氷塊の中心、永遠を閉じ込められた女性の姿を、メツは見るとも無く眺めていた。
 メツはそれをただ単なる棺としてしか見ていないが、そうは思っていない者がこの船には二人いる。
 一人はこの氷塊の造り手であり、もう一人は、その造り手と共に旅をした少年である。
 ……いや、今の彼を少年と言っていいかどうか。
 氷塊を挟んで向こう側に座っていた金髪の青年にメツは声をかける。
「で、なんでわざわざ俺を呼び立てた? しかもシンが寝込んでいる時に来いなんて」
「おまえに聞きたい事があったからな」
 青年は――サタヒコは立ち上がった。視線の高さはメツとほとんど遜色ない。青く鋭い瞳が、黒い天の聖杯の瞳を射貫く。
「おまえ、自分の事を消去者《イレイサー》と言っていたよな。この世から消せないものはないって」
「まぁ創造主《おやじ》が言っていたからそうなんだろうさ」
 実行のための制約はいろいろとあるが、自分はそのように造られたものだとメツは知っている。おそらくどんなものでも少し深奥《メモリ》を調べれば演算子《やり方》を探すことは容易い。
「やってみようと思いや何だって出来るはずだがな」
「俺の頭からヒカリの記憶だけ消すことは出来るか?」
「なんだァ? 藪から棒に」
 突然もう一人の天の聖杯の名が出てきたことにメツは面食らう。その名を、その名を聞くのは何百年ぶりだろう。
 自分とは違い破壊の本性を受け入れられず、こちらを死地に追いやりながらも自らは心を自壊させた、相棒。
「まぁ出来ねぇ事はないとは思うが、なんでまた」
 サタヒコは氷の表面を静かに触った。
 溶けることはない。
 それは造り手の意思が強固なるゆえに。
 中にいる彼女を護る強い意思があるゆえに。
 遂げたい復讐が生き続けているがゆえに――。
「俺は、俺達をこんなにしたアーケディアをぶっ潰したい。ブレイドと人を愚弄する奴らをとっちめたい。ただそれだけなんだ。……でも」
 同じ復讐を心に抱く青年は、しかし、その一瞬、泣きそうな顔で向き直った。
「ミルトを見殺しにしたのはヒカリだって事が頭から離れない」
 瞳の奥に感情がゆらめく。
 言い知れぬ幾つもの言葉を飲み下し、彼は言葉を絞り出した。
「俺は、ヒカリを憎みたくない」
「……言うねぇ」
 ぶつけられた重い言葉をメツは軽く受け流す。人間《ヒト》の激情、それは常に興味深いものではあるが、メツは機械《メツ》であるが故に、その感情に乗ることはない。
 だから冷笑的な態度でメツは問う。
「元はといえば俺が相棒《アイツ》を煽ったからだ、とは言わねぇのかよ」
「おまえだってあのクソ坊主《マルベーニ》の被害者だろうが」
 虚を衝かれたようにメツがサタヒコを凝視する。鋭く吐き捨てた側のサタヒコはその瞳をまっすぐ射抜く。
 二人の間を、短くはない時が去来する。
「はン」
 大袈裟に息を吐きながらメツが視線を外した。
「そういう潔さは嫌いじゃないぜ。長生きも出来ねぇだろうがな。サタ」
「したくて長生きしているんじゃないぜ、メツ」
 皮肉めいた嗤いをメツは、今度は受け流すことはしなかった。
 経た時が彼にその顔を――今まで幾つも見てきたのと同じ顔を――させてしまうのだとしたら、なんとヒトの生は残酷なものなのだろう。
 まっすぐ視線を向けるサタヒコに、メツもまたまっすぐ向かい合う。
「正直、俺がそんな器用な事が出来るかどうかはわかんねぇ。お前の頭をぶっ壊しちまう可能性だってある。それでもいいんだな?」
「ああ」
 まっすぐだ。メツは思った。どうして人間《こいつら》はこんなにもまっすぐで居られるのだろう。
 たとえそれが破滅しか呼ばないとしても。
「覚悟しろよ、サタ」
 メツが額に手をかざす。瞬転、空気が帯電し――



「ぁぁぁあぁぁぁあっぁああぁあぁあああぁ……!」
 脳を直接鷲掴みされるような衝撃。声ならぬ悲鳴がサタヒコの口から迸った。が。
――俺が、俺ならざる者に変えられた事に比べたら、こんな痛み……!
 実験という名で体を弄ばれた。過去が記憶が己を苛み続ける生を押しつけられた。不死は、それを望まぬ者にとっては拷問だ。
 記憶があるから苦しむ。苦しみを増やし続ける。要らない憎悪を膨らませる。
 それがわからない愚か者が、戯れを望んだ結果が今の自分。
 ならばせめて、復讐に生きよう。復讐に生きる者たちと手を携えて、本当の愚か者だけ倒せればいい。
 それでも。
 それでも、あの事実が、俺の復讐を曇らせる。
 彼女が俺の事を託したばかりに、あいつは俺を庇い命を落とした。彼女の言葉がなければ、あいつは自分の身を守る事が出来ていたはずだ。だけれどもあいつは俺を守る事を一番に選んだ。託されたからこそ選んでしまった。
――そんな事は、そんな悲しい事は、覚えて無くていいんだ。
 記憶の欠片が脳裏を舞い散る。皆で囲んだ野宿の焚き火。傍らで笑い合う仲間達の笑顔。分けあって食べたルスカパンの香ばしさ。
 その中で、ただ一人の顔が、姿が、砂のようにおぼろげになって崩れていく。
 本当だったら失いたくはない、騒がしくも賑やかな日々。自分の中の暖かく楽しかった思い出。でも。
――いい。いいんだ。それでいい。
――ただ憎むべきは、この世界を憎悪で見限ったあの男だけ……!
 サタヒコの頬を、一筋の涙が伝って落ちた。
 記憶の中の、ただひとりを消し去った、それがそのひとしずく。




 白目をむいた彼の体が、力を失い大きく傾いだ。
 完全に気絶したサタヒコをメツは受け止める。
「ったく、人間《おまえら》って奴はよぉ……」
 その表情を見た者は、この世界にただの一人も居なかった。



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↑こちらはタイムスタンプ代わりにタイッツーに投稿する用の新書ページメーカーの背景に差し込んだ画像…を再現したもの。
Paint.netの【Randam Shape Fill by pyrochild】でこさえたので、背景に使ったものやこちらのものと全く同じ物は私にも再現不可です。(ていうかこのプラグイン私どこで拾ったの? Paint.NET不完全マニュアルさんのおすすめ一括からかしら?(忘却))

閑話休題。
ヒカリの事はまるで初対面なのに、ムービーでカスミの能力を明確に理解していて、且つ彼女を無理やり使役してるのがマルベーニであることも認識してるんですよね、サタ(4話『ファン・レ・ノルン』参照)。それはそうとしてラウラの事は大事。めっちゃ大事。マルベーニ絶許。
ということは、ヒカリのことだけまるっと覚えてないんじゃないかなと思ったのです。でも、あれだけ楽しいイーラの面々の中でそんな器用な健忘ってあり得るの?と思ったのも事実。出来るとしたらマルベーニによる実験の副作用かそれとも…と考えた時に、この展開、メツが便利に使えそうだなと。
実際に手を下したのはメツ(の攻撃の余波)ですが、遠くから見ていただけのサタからしたらどっちがやったとか判別ついてないだろうし、むしろその後システムイド発動(違)して無差別爆撃してイーラまで沈めたヒカリ=セイレーンの方がよく見えてたのではないかなと思うのです。だから避難船でミルトの遺体に触れようとしたヒカリを振り払うようなしぐさをみせたんだと(イーラ『叫び』参照)。「おまえにミルトを悼む資格はない」――幼い彼なりの精一杯は、矛盾を薄々感づきながらもそのまま彼の心をずっと苛んで来たのではないかな。メツと組んだシンに寄り添う矛盾を、マルベーニへの憎悪に必死に塗り替えながら。でも……。
4話末のイベントでヒカリを旧知の者としてではなく「天の聖杯」という記号《モノ》でしか認識してない理由がこれで埋まるんじゃないかなと思ってます。そう考えると4話も9話も徹頭徹尾ヒカリとサタの絡みがないのも不自然じゃないよね、と。…2週目での加入イベントでなんかあったらゴメンナサイだわ。ゼノが忙しくてゼノ2週目一つもやれてない(そもそも4000年後の未来に生きてく理由が見つかるコアクリスタルが手に入らない)上に、正直アルレコの読み込みも浅いのでかなりビクビクなんですが、エンディングまで見た中での私の受け止めの一環として、多少矛盾があっても今のままで出来る私の考察の一環として、今の形を残す方を優先しました。
(ていうかイーラはヒトノワ埋めないまま終わりにしちゃったのもさることながら、3もXもそもそもWiiU版すら積んでるのじゃ…ぼやぼやしてるとモノリスが新作出しちゃうのぢゃ……(嬉しい悲鳴(予約)))。

ちなみに毎度おなじみタイトル難産報告。
岡田芽武の幻の作品『朧-OBORO-』で出てきた「恐怖という感情の去勢」という概念、これが頭にあったんで、去勢という単語にまつわる言葉をタイトルにしようかと思ったのだけど、語感(響き)がしっくりこなくって。で、ネットをうろうろしていたところ、ローマで「個人記録を歴史から消された皇帝(damnatio memoriae)」の話を見かけまして。「あ、これ、いいんじゃね?」と採用した次第。カタカナ読みするとちょっとくどいんですけどねー。
「恐怖の去勢」という概念は、講談社に移籍後に描かれた『ニライカナイ』や元々の『影技』にも出てきますが、扱い方としては『朧』の方が好みです。話のついでだが傭兵団ワダツミ部隊の名前が「ニライカナイ」なのも好き。「意味は知らない方がいいだろうね」の深さにニヤリしちゃう。

ところで、ブレイドイーターになった者は、肉体的に成長(老化)するんでしょうかねえ? この作品では(二次創作ゆえのご都合で)「埋め込まれてからは常人よりも老いが緩やかになるが変化しない訳ではない」勝手に定義付けてます。イーターさせられたのがちびサタで、500年したら優男になってるということはある程度成長はするんではないか?と。成熟年代に達したら成長が止まる可能性もあるなあとは思いましたが、メツが復活するまでの時間もあるしなあと思ったのでこうしました。でもメツの復活時間考慮すると、路地裏で絶望に駆られてしゃがみこんでたシンは何百年それをしているんだ可哀想すぎではないですか文月さん(それはそれで私は大好物ですが)。
まぁそれを採用すると、今のところ見た目年齢=公称年齢なジーク&無双だけどただの人であるメレフ様の雪だるま計画がどうなるかはかなり面白い話になりそうです。既に煎じてる方多い題材ですが私もいつか自分なりの二番煎じを作ってみたい。

それと、今回作っていて、うちのメツは随分人間観察楽しんでるなあと思いました。本編ラスバト後の「悪かねぇ」の下りで、メツは人類を心底憎んでいるのではなく「人から憎悪をひたすらに誤学習しまくっちゃったAI」という認識に至ったので。書いていて「結構慈悲深くない?メツ」となりがちになってしまったので、描写をプログラムで動く存在っぽくしたのはそこら辺が理由です。メツが悪いわけじゃなくて学習データアセットが悪すぎただけ! そりゃ皆さんメツブレイドも書く/描くよ! (ううう羨ましい私も書きたい…(長くなるので断念してる))
こうして考えると、アデルはヒカリちゃんを普通の女の子として扱っていて、本来の「強き力を持つ存在」としてよりも人と交わる生き方をどんどんインプットしてあげているのって、本当にヒカリにとって幸せな事だったんだろうなあと思います。本人は無自覚にやっているんだろうけど。
前にも書きましたが「光のケビン先輩」的なものがいたらアデルになるのかなあ、とか思ってみたり。KOS-MOSというAIを、ただの兵器ではなく人と交わる存在として育て上げる思想、それは、テスタメントとしての使命抜きにしてケビン先輩がアンドロイドを作り上げる上でやりたかった事であり、その優しい思想は共に制作に携わったシオンに受け継がれていて彼女の継承した開発の中に生きているのかなあと、そんな事を後発作品から鏡映しに想像してみたりもするのです。…EP3駆け足過ぎてケビン先輩ヴィル様のパシりにしかなってないけど、もっとなんかあったよねえ?ねぇ!?ヨアキム×ケビンのウスゥイ本出せる位のネタとかさあ!(待てや貴腐人)

それはさておくにしても、やっぱりゼノは一度クリアしてもまたもう一回読み込みたい~~~~~!って部分がホント多過ぎる! そして読み込めば読み込むほど、その隙間の物語が浮かんでくる気がする~~~~! そういう意味だと多分私の中では二次創作のネタが尽きないんでしょうね。
ゼノが忙しくてゼノが出来なくてでもゼノしたいんですよ、な状況はもうちょっとだけ続くんぢゃ、なんだろうなあ。




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